健康被害

日差しの中に含まれる紫外線。紫外線は日焼けやシミ・そばかすなどの原因になるだけでなく、皮膚がんや白内障、紫外線アレルギー、免疫力低下など、時に私たちの健康をも脅かす場合があるのです。では紫外線を浴びる事が原因となる健康被害とは具体的にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

 

 

 

皮膚がんについて

人は紫外線を大量に浴びると細胞の遺伝子に傷がついてしまいます。傷ついた遺伝子は、通常であればおよそ2日間程で修復されますが、限度を超えて紫外線を浴びてしまうと遺伝子が正常に回復せず、遺伝子に傷がついた状態で細胞分裂を繰り返してしまいます。その結果、遺伝子が誤った遺伝情報に書き換えられてしまう突然変異を起こすのです。これが皮膚がんを発症してしまう原因となります。 紫外線の種類の中で、皮膚がんに影響を与える紫外線は紫外線B波(UV-B)と言われています。

 

遺伝子回復の機能を乱す紫外線の限度量は、それぞれ人の肌タイプで異なります。そしてこれにはメラニン色素が大きく関わっているのです。(メラニン色素については「紫外線の影響 /紫外線とシミ」でお話ししています。)このメラニン色素は肌の色タイプでその量が決まっています。メラニン色素の量が多いほど肌の色は濃くなります。またその分紫外線から肌細胞を守る力が強いという事になります。つまりメラニン色素が多い肌の色ほど皮膚がん発生率が低く、反面メラニン色素が少ない肌の色ほど皮膚がん発症率が高くなります。ですので、同じ紫外線量を浴びても、肌の色(人種)によって皮膚がんの発症率は変わってきます。

 

また、子供は細胞分裂が活発なため、大人よりも遺伝子が誤って治される確率が高くなると言われています。10歳ぐらいまでに紫外線を多く浴びると皮膚がん発症率が高く、また発症年齢も早まるとされています。

 

△皮膚がんのメカニズム
紫外線を大量に浴びる。
 
細胞の遺伝子が傷つく。
 
修復されるまもなく紫外線を浴び続ける。
 
遺伝子に傷がついた状態で伝達される。
 
誤った遺伝子情報のまま細胞分裂を繰り返す。
 
突然変異となってしまった遺伝子が皮膚がんになる。

 

主な皮膚がんの種類と特徴

皮膚がんとひとことで言ってもその種類は数十種類にのぼるとされます。主な皮膚がんには以下のようなものが挙げられます。

 

基底細胞がん
(きていさいぼうがん)

皮膚がんの中で最も多い種類。主に顔、中でも鼻に多く発症。黒色のしこりが特徴で潰瘍化するケースも。まれに無色のものもある。年齢と共に大きくなっていくため高齢者に多い。転移はほとんどないが、進行すると患部皮膚内の筋肉や骨にまで侵入する場合も。

有棘細胞がん
(ゆうきょくさいぼうがん)

有棘細胞がんは、基底細胞がんの次に多い皮膚がん。紅褐色のしこりや潰瘍が出来るのが特徴で、潰瘍化すると強い臭いを伴う。日光角化症が悪化して発症するケースが多く見られる。発見や治療が遅れると、基底膜を破壊してリンパ節などに転移を起こしやすい。紫外線以外ではやけどが原因となる事も。

日光角化症
(にっこうかくかしょう)

日光角化症は、紅褐色の斑点が特徴の皮膚がんのひとつ。老人性角化症とも呼ばれる。発症部位は顔が最も多く全体の8割ほど。その他は頭部、鎖骨、手の甲などに見られる場合も。自覚症状がほとんどないため病識がない事が多い。長年に渡って紫外線を浴びる事が原因。そのため70歳以上の高齢者で、中でも女性に多く見られる。悪化すると有棘細胞がんに進行する危険性も。

悪性黒色腫
(あくせいこくしょくしゅ)

別称でメラノーマと呼ばれる皮膚がん。色素細胞ががん化したもので、色白の肌タイプに多く見られる。転移しやすい皮膚がんとされ、4ミリ以上に増殖するとその可能性が高くなる。手術では広範囲の皮膚やリンパ節を切除しなければいけない場合も。黒褐色や赤いほくろのようなものができるのが特徴。

 

その他にも皮膚がんには、パジェット病、菌状息肉症、セザリー症候群、ボーエン病などがあります。

 

白内障について

白内障とは、眼球の水晶体が様々な要因から白く濁る眼の病気です。水晶体はたんぱく質と水分で出来ており、通常透明弾力性に富んでいます。また、カメラのレンズの様な機能を持っているほか、紫外線を吸収する役割も担っています。ところが加齢などによって、水晶体のたんぱく質は紫外線を吸収し続けて酸化。透明な水晶体が濁り弾力性も低下します。結果、視力低下など視界を妨げるような様々な症状が現れ、悪化すると最悪のケース失明してしまう場合も。

 

そしてこの白内障の大きな原因と考えられているのが紫外線です。この白内障は、紫外線B波(UV-B)の原因となる病気では皮膚がんと同様に深刻な病気なのです。白内障の発症率は紫外線の量が多い地域に集中しており、WHO(世界保健機関)でも、白内障の約20%は紫外線が原因だと発表しています。長い期間徐々に進行していく事が多い事から、高齢者の発症率が高いのも特徴。

 

白内障の症状

白内障とは、水晶体が加齢に伴って白く濁る病気。水晶体はを集めてピントを自動的に合わせる、カメラのレンズの様な機能があります。白内障になると通常は透明な水晶体が白く濁ってしまうため、外から集めた光が眼底に届きにくくなる事から、以下の様な症状が引き起こされます。

  • 視力の低下
  • 視界のかすみ/ぼやけ
  • 光や明るい場所が眩しい
  • 一時的に近くが見えやすくなる

紫外線と関係のあるその他の眼の病気

白内障の他にも紫外線を大量に浴びる事が原因となる眼の病気があります。主なものは以下のものが挙げられます。

 

【雪眼炎(せつがんえん)】

雪眼炎(光誘発性角膜炎)とは、地面に反射した紫外線を長時間、また大量に浴びる事により角膜が炎症を起こす眼の疾患。「雪目(ゆきめ)」と呼ばれる事も。雪山や海など紫外線が反射しやすい地表で起こりやすくなります。紫外線を受けた後、しばらく経ってから起こる激しい痛みが主な症状。

 

【翼状片(よくじょうへん)】

翼状片とは、強膜(白眼)の結膜組織が増殖して、角膜(黒眼)部分まで侵入した状態。紫外線を長年に渡って浴びる事が主な原因で、そのため中高年の人々に多く見られる眼の病気です。目がゴロゴロするなどの異物感や結膜部分の充血などが主な症状です。

 

【加齢性黄班変性(かれいせいおうはんへんせい)】

加齢性黄班変性とは、網膜にある黄斑の異常によって網膜組織の萎縮などが起こる眼の疾患。紫外線を長期間に渡って眼に浴び続ける事により起こります。視界がゆがんで見える変視症をはじめ、視力低下、中心暗点などが主な症状。悪化すると最悪の場合、失明に至る場合もあります。

 

紫外線アレルギー

紫外線を浴びると、人の体内では紫外線に対して抗体が生成されます。この抗体は紫外線を浴びるごとに作られ、紫外線から身体を守る役割を果たしています。ところがこの抗体が一定量を超えてしまった時に、湿疹や痒みなどのアレルギー症状が現れるようになります。そして一度この状態に陥ると、その後紫外線を浴びるたびにアレルギー症状が出るようになってしまいます。これが「紫外線アレルギー」。日光過敏症、または日光性皮膚炎と呼ばれる事もあります。

 

抗体が一定量を超えてしまうといつでも起こりうる症状なので、今までは紫外線を浴びた時に特に問題がなかったとしても突然紫外線アレルギーが見られる場合も。去年までは何も症状がなかったのに、突然春先に花粉症になってしまうのに似ています。こちらも花粉に対する抗体が一定量を超えてしまい、それがアレルギー症状となっているのです。また、どれほど紫外線を浴びれば紫外線アレルギーが出るようになるかなど、抗体の一定量を超える目安は体質などによりそれぞれ個人差があります。 主な症状は、肌が赤く腫れる、湿疹が出来る、痒みを伴うなど。

 

免疫力低下

人の身体には元々免疫機能が備わっています。この免疫機能は細菌やウイルスなど、人の身体にとって有害な物質が人の体内に侵入してくるのを防ぐ働きをするなど、人の体には必要不可欠な機能です。

 

しかし、日差しを大量に浴びる事により、紫外線(B波)が皮膚の免疫細胞を破壊。浴びた紫外線量によりその影響が変わって来ますが、紫外線を浴びた分量が多いと浴びた部分の免疫機能に影響を与えるだけでなく、全身の免疫機能を妨げる場合があります。そうなってしまうと免疫機能が正常に機能しなくなり、外部からの有害物質の侵入を防ぐ事が出来なくなってしまいます。 特に体の抵抗力が落ちてしまっている状態では、風邪をひきやすくなるなどウイルス感染をしてしまう可能性が高くなります。紫外線を浴びた後にヘルペスが出来やすくなるのも、紫外線を浴びて免疫力が落ちているためです。

 

さらに一度体の中に侵入した有害な物質は、たとえ免疫機能が回復したとしても、体が有害なものだと認識できなくなってしまいます。それが原因となって、それ以降その有害要素の侵入を絶えず許してしまうと言う事態になってしまう場合もあります。

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